2020/03/14 大学全般

卒業生・修了生へのメッセージ

 3月14日に予定しておりました2019年度の学位記・修了証書授与式につきましては、皆さまのご健康と安全を第一に考え、残念ながら中止のやむなきに至りました。ここに皆さまの晴れの門出にあたって、教職員を代表して学長としてのメッセージを送りたいと思います。

 卒業生、修了生の皆さん。ご卒業、ご修了おめでとうございます。
 生まれたばかりの人間にとっては、世界で起きるすべてのことがとても新鮮に感じられるものです。最初はすべてが想定外で新鮮な驚きをもって受け止められたものが、二度三度、そして数度と同じような経験をするに従って、すなわち経験値が上がるに従い、新鮮さや驚きは徐々に失われていきます。社会的存在としての人間は、さまざまな社会的経験を積むことで、いろいろなことが想定の範囲内に収まるようになってきます。
 人間が相応に年を重ねるということは、単に時間が経過するというだけのことではありません。人間が年齢を重ねるということは、社会的に成長をするということを含んでいます。
 みなさんもこれまでにたくさんの社会的経験を積んできたと思います。札幌大谷大学においても様々な経験をしたでしょうし、これから社会に出てまだまだたくさんの想定外の経験をすることでしょう。なかには起きて欲しくない深刻な想定外の出来事に直面することもあるでしょう。
 一昨年の9月6日には最大震度7を観測した北海道胆振東部地震が発生し、本学が所在する札幌市東区も札幌市内最大の震度6弱を観測しました。本学では幸いにも大きな人的被害はありませんでしたが、施設面で大きな被害を受けました。北棟1号館が使用禁止となり、その後、解体のやむなきに至りました。
 昨年4月には、百周年記念館西側に新校舎が完成しましたが、震災から新校舎完成までの7ヶ月弱の間、皆さまには、授業時間割、授業計画および使用教室の変更ならびに実習室の移設など、大変なご迷惑と不自由をおかけいたしました。皆さまの卒業にあたりまして改めてお詫びいたします。
 また、2019年11月に発生が確認された新型コロナウィルスは現在、世界各地に拡散しつつあり、私たちの社会生活や経済活動に深刻な影響を与えつつあります。
 想定外の出来事には自然災害や感染症だけでなく、人災もあります。社会的な災害や政治的な災害に直面することもあるでしょう。そうした危機的な事態に直面して、怯んだり、怖気づいたり、たじろいだり、諦めたりすることもあるかもしれません。絶望的な状況の中で、希望を失いかけることもあるかもしれません。しかしながら、そうした事態は、望んでいなくても起きてしまう場合があります。
 このような想定外の状況に直面したときにどうするか。こうしたときこそ人間の真価が問われます。こうしたときにこそ人間の成長が問われるのだと思います。すべてが想定内であればそれはそれで幸せな人生かもしれません。しかし、生きている限り、想定外の出来事に遭遇することは避けられないことであり、歴史的社会的な存在としての人間は、こうした想定外の経験をみずからの成長の機会として活かしていくしかないのだと思います。
 危機的な状況は実践的に解決する以外にありません。そして、人間はこうした状況を社会的に解決する必要があります。多くのものが、社会的にしか解決することのできないものだったりします。そして、よりよい社会的解決を導くためには、社会を構成する一人ひとりが自律的で能動的な判断力を有している必要があります。
 皆さんが札幌大谷大学で学び身に付けた専門性と学生時代に体験した社会的経験は大切な財産です。札幌大谷の卒業生であるというアイデンティティを大切にしてほしいと思います。札幌大谷の卒業生として、今後もますます自分の経験値を高め人間としての成長を目指してください。
 札幌大谷大学も、そのアイデンティティを大切にして、道内でもかけがいのない個性的な大学として、本学が有する専門性にこだわり続けながら、大学としてのクオリティを高めつつ、皆さんの期待にこたえられるようますます進化していきたいと思います。
 札幌大谷大学でこうして立派に育ったみなさんを、卒業生、修了生として世に送り出せることを、学長として心の底から誇りに思います。
 卒業おめでとう。たくましく生きてください。

2020年3月14日
札幌大谷大学・札幌大谷大学短期大学部 学長   髙橋 肇